軽トラック激走1300kmの旅
その日は我が母校のサークル(モーターサイクル愛好会といいます。)のOB会が開催される運びでした。しかも猫の顔は友人のタロー君と幹事役でした。
もちろんそのために、せっせと愛車CB650を整備しており、白バイとの腕試しやらを行い、調子を見ていたのです。しかし、なんと、左マフラーからの排気煙にうっすらとオイルスモークが出始めたのが、2週間前でした。不思議なことになぜか左側だけなのでした。
当然考えることは一つ。ピストンリングが摩耗しており、徐々に潤滑油(エンジンオイル)を燃焼しているということです。中古車(というか大古車か?)にはこういうトラブルがつきものなのです。いずれはエンジンの焼き付きという致命的なトラブルは必至です。
悩みました。一度は新幹線での参加も考えましたが非常にハイコストです。
また何よりもCB650での参加を夢見て日夜整備してくれ、車検まで取得してくれたタロー君にも失礼にあたるような気がします。さりとて、走って行ってCB650を壊すわけにもいかず、どうしようかと一人悩む猫の顔の前で、時は刻々と非情に流れていきました。
いよいよ金曜日の夜になりました。参加の皆様には、偉そうにCB650の事を吹聴していたので今更電車での参加は心苦しいのでした。
そうか!その手で行けばよいのか!と猫の顔の頭に一つの考えがひらめきました。
軽トラのレンタカーにCB650を積んでいけばよいのです!!!
当日のお話。
当日、タロー君は朝の5時に既に中央高速に入り、順調に走っていました。猫の顔もCB650を連れて9時半に家を出ました。
中央高速では大月までかなりの渋滞でした。当然CB650を積んだ軽トラも渋滞にはまり、泣く泣く我慢をしていたのでした。昼に中央高速から長野方面に分かれて、ここから安房峠を抜けて高山へと向かいます。
安房峠は非常に整備されており、あれよあれよという間に高山に着きました。高山からは白鳥(しろとりと読みます。)まで高速道路。白鳥からは油坂峠を抜けて福井県大野市に入りました。この時点で1830に鮎川駐車場に集合可能が濃厚となったので、タロー君にメールしました。彼はこの時点で母校のキャンパス内にいました。大野市からひたすら福井市を抜けて鮎川駐車場に着いたのが1730頃でした。
私はあの30数年前の屈折した思い出に浸りながら駐車場で、皆さんの到着を待っていたのでした。たとえ軽トラ積載であれ、俺は最愛のCB650と共に、この海岸線に来たのだ。CB650を降ろしてからは、ぜひともこの305号線をたとえ少しでも走ろう。とまたまたセンチな感傷に浸るのでした。
待つことほぼ1時間。皆様のご到着です。
皆様からは、感嘆の入ったお言葉を賜り、また荷台からのCB650の降ろしも手伝っていただき、ついにCB650は鮎川駐車場にオンザブーツしたのでした。
この感激をなんと表現したらよいのでしょうか?一人感傷にふける猫の顔を外目に、皆様による、大試乗会が開催されました。特にXJ650スペシャルのK氏は我がもの顔で駐車場内を走るのでした。
さて私の番です。さっそく305号線を少しだけ走りました。これこそが私が憧れていた風景でした。感無量でした。
皆様からは「軽トラとは思いつかなかった」とか「帰りは誰を積んでかえるのか?」という無責任な質問が飛び交いましたが、まさか次の日にそれが現実となるとは参加者の誰もが思いもよらなかったことでした。
風呂の後、宴会、そのあとお部屋での飲み会もそこそこに盛り上がりました。特に私の持ち込んだ「チョーヤの完熟梅酒」は好評でした。本日の走行500km。
次の日のお話。
朝目を覚ますと、まじめなK君は愛車W1S(右チェンジ)の整備に余念がありませんでした。また参加者同士の大試乗会が再度開催され、試乗された皆様はCB650の運動性を絶賛してくれました。
その中で、独りW1Sの調子を見ていたK君の顔色がすぐれません。どうも始動不能という事態になったようです。キックの鬼と化したK君のW1Sからは「ガルル、ガルル」というむなしい排気音しか出ません。どうやら点火系の不調の様です。
ついにK君が決断しました。「大阪までW1Sを積載してくれ」。やはり幹事役は、こういう不慮の場合に対応できなければなりません。軽トラ攻撃は正解だったのです。
人足はたっぷりいるので、あっという間にCB650とW1Sの2台が積載されました。なお、軽トラの積載量は350kgであり、当然過積載ですが、ここはやむを得ません。
鮎川から武生、今庄から高速道路、米原経由、大阪まで行きました。ここで、この軽トラの底力を知りました。400kg以上の二輪車を積んでもスピードメーターの120km/hを出し切るのです。当然高回転の金属音とともに激走したのでした。
この米原から大阪までが非常に寝むたく、睡魔との戦いでした。
大阪から西名阪、東名阪、伊勢湾湾岸道路を通り、やっと東名に入ったのが2000ごろでした。そこから新東名に入り先行して東京方面に向かうタロー君のCB750FOURとK君のXJ650スペシャルを必死に追いかけました。孤独な厳しい走りでした。中学の時に読んだ「走れメロス」を思い出しました。この時点ですでに600km以上の走行をしているのです。しんどいのです。やっと東名の港北PAのすぐ手前で、CB750とXJ650を見つけました。追いついたのです。彼らも疲労していましたが、こっちも窮屈な軽トラでかなりの重労働でした。
話もそこそこに、お互いの家にまで帰ることにして、やっと自宅に着いたのが0200でした。本日の走行は800kmでした。めっちゃ疲れました。
さらに次の日のお話。
月曜日の8時にレンタカー屋に軽トラを返却しなければなりません。
独りで必死にCB650を降ろして、なんとか間に合いました。この数日間に使用したガソリンは合計110L、1300km走行しましたので、燃費は11.8km/Lでした。660でAT車で、過積載、スピード超過でしたから、非常にバカ食いでした。
なお、大阪のK君のW1Sはバッテリーを交換したら、一発で始動したらしい。まあ、ぶっ壊れていなくてよかったなあ!
おしまい。
執筆 猫の顔

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