深夜の咆哮
皆様、お寒くなりました。猫の顔でございます。
実は、復帰第1戦ツーリングの最終段階で、忘れ去る事が出来ない出来事があったのです。
その夜、といっても深夜の3時頃でしょうか?
中央高速国立府中インターを出るころには街中にも車もチラホラしか走っていない状態でした。寒さと孤独感、ここまで帰ってきたという安心感やらがごちゃ混ぜになった猫の顔の頭の中は少しでも早く布団に入って寝ることしか考えていませんでした。
国立府中を出てから、聖跡桜ヶ丘方面へと、一人で孤独にCB650を進めていました。もう何年も前に、ここに大きな橋が出来て多摩川の反対側までには、橋の上を通ればすぐに聖跡桜ヶ丘方面に出れるようになったのですが、車も、二輪もなく、対向車がチラホラの夜の都道20号線(野猿街道)は寒くて孤独でした。
ふと信号待ちをしていると、後方から二輪の爆音が聞こえてきました。1台です。しかも聞きなれた、忘れる事のできないHM300の音です。それはかなりの速さでグングン近づいてきました。
そのCB750(K2、青)は、スッと猫の顔の右隣に停車しました。アイドリングでの「ゾクゾクゾクゾク」という音と、きらきらに磨き上げた車体、手入れが十分のCB750でした。ライダーの赤ジャンパーの背中に高名な「クラブCB750ドリーム」のロゴが入っていました。20数年前には猫の顔も在籍していたクラブです。
ライダー氏は、薄いスモークのシールドから、無言でチラとCB650を見たような気がしました。深夜の信号待ちに、CB750FOURとCB650が並びました。なんという偶然の光景でしょうか?思わずフレンドリーに話しかけようか?と考えた猫の顔の心理を読み取ったかのようにライダー氏は、無言で右手をスナップしました。
「ズオン!」
と他を制圧するような、猫の顔の話しかけをさえぎるような、それはそれはドスの利いた立派な排気音が深夜の街中に染みました。音の迫力に押されて話しかける事はできませんでした。
猫の顔は努めて平静を装って、お返しに一発くれました。
「ワン!」
全く、話になっていませんでした。ドスどころかそもそも「元気が無い排気音」でした。悲しくなりました。
相手の信号が黄色になりました。ここは一発やらなければならないところです。
CB750氏は、クラッチをゆっくり切って、ローに入れました。「スタン!」
CB750の最高のギアの入りの音です。
長年CB750を乗り継いだ猫の顔には、そのCB750の動力伝達系が完調に整備されている状態であることが手にとるようにわかりました。もちろんCB650もギアを入れました。「カコ!」ミッションの入りで既に負けています。
そして、信号が青!
当然出足はCB750の方が勝りましたが必死に車体1つの差でついていきました。しかし、頑張って2速、3速と6000まで引っ張る猫の顔をあざけり笑うがごとくCB750氏は3速にいれて加速したあと、車体一つリードしたのをチラとミラーで確認したあと、ひと呼吸おいてから、思いっきり右手の肘をこれ見よがしに下げてフル加速して、HM300からは素晴らしいサウンドを出しつつ、そのまま到底追いつけない速度で走り去ったのでした。
赤ジャンパーの背中が「CB750の速さの全て」を語っていました。久々に泣き狂うホンダサウンド、吠えるホンダサウンド、HM300の魂の叫びを聴きました。相模ナンバーの3桁が、排気音に感動してうっすらと涙ぐむ目に染みました。
あたりにはHM300の豪快な排気音とCB650の去勢されたような排気音のみが漂うばかりでした。
やっぱしCB750FOURはいいなあ!
執筆 猫の顔

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