大河の流れ
とにかく車社会である。ハイウェーは最大片側7車線もある。そこに車がびっしりと100kmを超えるスピードで走っている。日本のように「遅い車」などほとんどいない。若者からお年を召した方も皆、流れに乗って走る。まるで大河の下流のようである。
その大河の流れの中に混じるオートバイの数は極めて少ないと言ってよいだろう。しかし出会うオートバイは以外にもスーパースポーツの割合が多い。マフラーチューンが流行りのようで、どのオートバイもフォーーーン!と、今時のサウンドを残して車の間をすり抜けて行く。果たしてライダーのお年は、その派手にペイントされたフルフェースの中をうかがい知ることはできないが、時期的にもすっかり冷え込みが始まった朝であろうと、半袖姿で平気でご乗車なさるアメリカ人には脱帽である。
滞在したホテルの駐車場にはたまたま、KAWASAKI KLR650が止めてあった。日本では珍しいと言ってようだろう希少車であるが、果たしてこのアメリカではこれが珍しい部類なのかどうかはわからない。カリフォルニア州を南北に走るハイウエー101号沿いのホテルであるので当然、高速クルージングもしてきたのであろうが、ダートを走った形跡もある。こちらでは、「林道」というより「荒野」を攻めに行くのであろうか。大排気量のデュアルパーパスツアラーは、BMWのGSシリーズに代表されるものが、欧州や日本では大流行りなのかも知れないが、アメリカでのツアラーはやっぱりHDではないのか? とすると、このKLRは少し古いし、オフ志向が強いし、やっぱりアメリカでも珍しい車両に違いない、と勝手に想像するのである。しかし、HDは案外少ないな。日本市場の方がよっぽど売れているのであろう。
サンフランシスコの街中に止めてあったHONDA RVT1000という単車。海外専用仕様なのだろうか私は聞いたことがない名前である。しかし、左右にかちあげられたステンレスマフラーには、とても馴染みの深い赤い四角いシールが目立っていた。ここでも、「ヨシムラ」は、オートバイの世界でその存在感をアピールし続けているのである。
しかしこのバイクよく見るとミラーが無いぞ。大河の中では誰よりも前へ速く突き進むマシンに、後ろを確認する必要すらないのであろう。
