アメリカンの行方
大きくライダーの手前まで湾曲したハンドルとファットなリヤタイヤ、短く切られたマフラーが、嫌でもハーレーを意識して、かつ、真似したと言われ無いように、メッキを多用してオリジナルムードを出している。元々はアメリカの映画で登場したチョッパーを彷彿とさせる乗車姿勢であるが、本家のあのスタイルでは天下の運輸省の認可が取得できる筈もないので、あのスタイルとなったと思われるが、発売後からじわじわと世の中で受け入れられ始め、いつの間にか4メーカーともアメリカンモデルを開発し、また、結構なブームになったのである。
ご存知の通り、各社のモデルには専用の名称が与えられた。 YAMAHAはスペシャル、HONDAはカスタム、SUZUKIIはLの文字、Kawasakiはリミテッドである。
当然ベースモデルは各社のヨーロピアンロードモデルであるが、各社とも、上手くエンジン性能を調教して、なかなかの忘れられない個性的なモデルも登場した。例えば、カワサキではZ750LTDである。アメリカンが遅いと思ったら大間違いで、フル加速時には、ナナハンの加速を充分に味わわせてくれる。また、SUZUKIのGSX400Lも、名機TSCCエンジン搭載である。YAMAHAのXJ750Aに至っては、コマーシャルコピーが「コンピュータークルーザー」である。
楽チンなポジションで、ここぞの場合には、きっちりスポーツ性能を発揮する二輪車が、街中に走り出したのである。それが本来のアメリカンモデルの楽しみ方とは思えなかったが、買って走り回る人もいたのであるから支持層はあったのである。
筆者はアメリカンモデルは好きではなかった。が、しかし、YAMAHAのXJ650スペシャルのフル加速時の一次減速のギヤ音とそのスタートダッシュを見てからというもの、カッコいい!とつくづく大型車のアメリカンに憧れたものだ。通常は粛々とジェントルに走り、高速道路のインター入った後とかのフル加速の場面に憧れたものだ。でも、いかなる場面でも、ドコドコ感を楽しみながら、のんびりと走るのも悪くない乗り方だ。その場合の最大の楽しみは、セコい話だが給油時の燃費の数値であろう。650の車で、28kmとか走ったらさぞかし嬉しいだろうなぁ。
HONDAのウイングGL500カスタムも良かったなぁ。乗車姿勢で水冷のシリンダーヘッドが、左右に力強くはみ出ているのが良かった。確かあの単車、めちゃくちゃ燃費悪いと聞いたけど、ムードは良かった。
カワサキのZ400リミテッドもシートの形が、良かった。エンジンは400RSである。さぞかし燃費も良かったであろう。
夏の岬で出会った、YAMAHAのXS650スペシャルのマフラーには、メッキに泥が着いていた。ブーツの擦れるところだけがピカピカになっていたなあ。
アメリカンモデルは、他人との比較をする車では無い。あくまで、自分の乗り方、走り方を一人で楽しみ、自分自身に問いながら走る車である。誰が後ろから抜いて行ってもよいでは無いか?たまには渋滞に巻き込まれてもいいでは無いか?
自分の時間を自分の愛車と自分流の楽しみ方で味わいながら走るのが、アメリカンの乗り方と思えてくる。
あんなに一杯あったアメリカンモデルも現在では少なくなってしまった。悲しいが、これも時代なのであろう。
アメリカンもやっぱりいいなあ。
いつか、夕暮れのウエストコーストで。ドコドコ音と共に。ピース!
