カワサキZ400FXの思い出
11 28, 2017Posted inZ400FX
現在では珍走団や旧車会の皆様が御用達のモデルであるが、その生い立ちは決してグレておらず、間違いなく設計者の思いの込められていた熱き2輪である。
国内発売開始は1979年4月となっているが、そのベースモデルはすでに欧州で発売開始されていたZ500である。
当時の欧州では、排気量が500cc以下では税金が安い国が多いらしく、発売開始とともに売れていくのである(最終的にこのハードルは450cc以下となった)。参考までにスズキのGS400はGS440、GSX400EはGSX440Eとして販売されていた事実に注目したい。これらの見慣れない排気量の機種は、現在では逆車でたまに見かけるのである。
一方、この頃の国内中型排気量マシンは、特に輸出用では大した新型機種がなかったのである。一例をあげると、カワサキではKH400、Z400、ヤマハではGX400、RD400、スズキはすでに見慣れたGT380、新鋭のGS400ぐらいである。ホンダに至ってはCB360T、CJ350、さらには売れたCB400FOURは採算が合わずに生産中止という状況である。
さて中型車種の4気筒搭載車は、かのCB400FOURが最初であったが、生産中止後の4気筒マシンはどこから発売されるのか、我々ヤングな若者はかたずを飲んで待っていたのである。
そうしたら、このZ400FXの発売である。もちろん川重としては欧州でうれたZ500をスケールダウンしての発売であるから、それほど苦労はなかったのではないかと思われる。発売直後からすぐに中型車種のベストセラーモデルとなり、街のあちこちで集合管を装着したZ400FXが走り回ったのである。
当時の記憶では、珍走団(当時は暴走族といいました。)が集合管をつけてのカラ吹かしのサウンドに酔いしれていたらしく、実家の近くの高速道路のガード下では土曜日の夜になると大量の族が集合管で爆音をまき散らしており、安眠妨害で生活権を妨げられていたのである。
言い換えれば集合管のメーカーも「大きな音がする」というだけで随分と儲けただろうと思っているし、その音は、今でも少しもすごいと思えず生理的に嫌悪感のみがよみがえってくるのである。この思いは現在でも同じで、マフラーからやたら大きい音を出すライダーは嫌いである。
当時の族の在り方を一変させたのは、もちろんCB400FOURもあったが、このZ400FXと集合管が張本人であると今でも思っている。
ノーマルのZ400FXは非常に静かなエンジンであり、少し吹かしたぐらいでは静かなエンジンの部類に入る。カチカチと小さなメカノイズはあるが、やはり静かな部類である。このエンジンは非常に伸びが良かったのである。2速で全開すると、タコメーターの針が上を向いてからの一気の加速で、やはり4気筒DOHCエンジンは伊達ではなかったのである。ただし、車体が500と共通のせいか、非常に大柄であり、着座位置が高く車体も重いので、小柄なライダーにはさぞ苦しかったと思う。ハンドル幅も少し狭かったように記憶している。
どこまでも伸びるような滑らかな加速とエンジンフィールは、さすがはよく売れた機種であると、納得したが、この感覚はすぐ後に出たヤマハのXJ400(1980年6月発売)ではさらに一層進化していたので、自身のCB350FOURからみたら、技術革新というのは大きいものだと納得したものである。
このころ流行りのスズカの耐久4時間にはZ400FXは最も多く出ていたのではないか?
すぐ後にCBX400Fやらが出て、レースの世界ではすぐに消滅したが、改造マシンがいろいろと出場していたのである。
市販車では最終的にはチューブレスタイヤ、セミエアサス等をまとい熟成した感のある最終型がやはりよかろうと思う。というよりもチューブレスタイヤの装置がここまで遅れていたモデルも珍しいものである。最初期モデルでのバッテリー点火は最終モデルではトランジスター点火となったが、無骨なフロントの右側のキャリパー用の穴は最終型まで残っていた。
Z500ではすでにWディスクである。国内向けのZ550FXが出た時もWディスクであったが、この穴が400に残っていたのは実に嬉しかったものである。
よくよく考察してみると、Z400FXは「4気筒DOHC」のみが売り物であって、ほかの細かい部分にはコストをかけられなかったのではないかと今は思っている。
次期モデルのZ400GPでは初めから数段ゴージャスな装備である。発売からわずか3年で、これだけメーカー側の意識を改革させたモデルは、そうないであろうし、その原因は熱狂して購入した我々のせいであるが、それだけ熱狂させるものがあったモデルであるのは間違いない。
現在では珍走団の方々に御用達であるが、本来ならば綺麗にマニアが手入れして乗り続ける意味のある名車であるのに、非常に歯がゆいものである。そういう意味では悲劇的でもある2輪である。
いつか、高速道路のパーキングで、コロナの黒いタンクバッグを付けた貴兄のZ400FXの隣に。
ピース!

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