全国3万人の読者の皆様、猫の顔です。
このところ、絶不調でして、久しぶりに一筆したためてみようかと思い筆を取ったのです。以前からこの記事を書いておかないと、我々世代のお父さんの細かい疑問にお答えできないと察し、久しぶりの執筆です。
2輪車のエンジンは、現在では一部の車種を除き4サイクルエンジンしか発売されていませんが、この4サイクルエンジンも色々と変遷がありました。
今回はその4サイクルエンジンの変遷について述べてみようかと思います。
その昔、昭和30年代の2輪車のエンジンでは、ほとんどがサイドバルブ、もしくはOHVという古典的なバルブ機構でした。
最初はサイドバルブエンジン(SVと表記します。)でして、シリンダーの側面に給気、排気のバルブがエンジン下方から並んでいる配列でした。これは最初期の4サイクルエンジンといえるでしょう。
このエンジンの特徴は、シリンダーヘッドの製造が非常に簡単であり、出力もそこそこ出たので、最初期の4サイクルエンジンではよく用いられた手法ですが、現存するSVエンジンは、洋の東西を問わずに残っていないでしょう。
これの発展型がオーバーヘッドバルブ方式(OHV)となります。旧式な言い方ですと「頭上弁式」となります。この機構が出たのは何と戦前です。シリンダー上部にバルブを設置して、エンジン下方のクランクシャフトからのプッシュロッドにて、バルブの開閉を行う方式です。プッシュロッドはシリンダー下のカムシャフトにより駆動されます。
このOHV方式は長らく2輪、4輪、もしくは航空機の星形エンジンとして採用されていた方式であり、そのメリットは燃焼室形状を自由に設計できることで、高圧縮比と高出力が確保できたことです。
その結果、洋の東西を問わず、長らく4サイクルエンジンの王座に就いていました。欠点は、長いプッシュロッドの、慣性によるたわみやサージングが高回転で発生することでした。しかしながら、ホンダのGL400においては軽く1万回転まで回るOHVエンジンも存在したので、また、昭和40年代の国産乗用車のエンジンほとんどがOHVであることからも、やはりコスト的には非常によくできた機構であったのでした。
ながらくBMWはこのOHV方式の水平対向エンジンを搭載していました。
水平対向エンジンのメリットは、何と言っても低重心と振動の少なさであり、そのシリンダー配列による走行風による冷却性も大きなメリットです。
バルブ周りが寝ているので、オイル潤滑性も、背の高いエンジンと比較して有利であるので空冷ポルシェのフラット6のリヤエンジンが冷却を補うために大量のオイルを循環させていたのは、ご存知の通りです。
さらに高回転、高出力を目指すためにカムシャフトをエンジン上部に設置して、カムシャフトが直接バルブを操作する機構が生まれました。これがオーバーヘッドカムシャフト(OHC)です。次に登場するDOHCと比較してSOHC(シングルオーバーヘッドカムシャフト)と呼ばれます。
このOHC機構の登場により、シリンダーヘッドが複雑化しましたが、燃焼室形状、バルブ配置の自由度が増し、さらに高回転、高出力の発揮ができるようになりました。オフ車のホンダドリームSL250SはSOHC4バルブエンジンです。
カムシャフトの駆動にチェーンを用いるか、ギヤを用いるかによっての差はありますが、圧倒的多数がチェーン駆動、4輪車ではタイミングベルト方式です。ちなみにチェーンではなく、タイミングベルト方式を初めて採用したのは、4輪車のホンダライフの360でした。驚くべき静粛性を持つこのエンジンの成功により、国産4輪車のカムチェーンはどんどん、ベルト方式になったのです。その後、ベルトの耐久性の問題が出ましたが、現在の4輪ではほとんどがタイミングベルト方式です。
2輪では、長らくこのSOHCエンジンが4サイクルエンジンの頂点でしたが、(ホンダの空冷4気筒シリーズのエンジンはすべてこのSOHCである。)その商品性を上げるために、カムシャフトを給気、排気の2本単独専用に設けたのが、ダブルオーバーヘッドカムシャフト(DOHC)です。
もともと、レース用では第二次大戦以前からDOHCエンジンが搭載されていましたが、そのコスト高から、なかなか商品化されてはいなかったのです。
単発的にホンダのCB450エンジンがDOHCでした。バルブスプリングをトーションバー(ねじり棒)方式としてサージング回避を狙ったのですが、それはビッグボア、ショートストロークエンジンであり、回転の伸びはともかくトルク感が少ないエンジンあったことが、最大のマーケットの北米で売れなかった理由です。
そこに、満を持して72年末に発表されたのが、カワサキの900Z1です。
空冷DOHC2バルブエンジンをまとい、見事な外観を誇るこの2輪車は世界的にも大ヒットした2輪であり、その圧倒的性能は先発のCB750FOURのSOHCエンジンをはるかにしのぐ傑作エンジンであったのです。
それ以降、2輪車の4サイクルエンジンではDOHCが主流となり、現在に至るのである。レース場での活躍は、ポップ吉村の歴史を参照願えれば幸いです。
このDOHCエンジンでさらに4バルブ化したのが、ヤマハのTX500です。当時のインプレッション記事を読んでも、かなりの性能を発揮したのであるからまあ成功したエンジンといえます。
シリンダー直上から見て、バルブ面積が大きく確保でき、かつプラグ位置をピストン中心に設計できる4バルブエンジンが、プラグ脱着の困難を除けば4サイクルエンジンの一つの結論でしょう。スズキのTSCCエンジンも同様のヘッド周りです。しかし、4サイクルエンジンはまだまだ発展するのです。
圧縮比を上げるために燃焼室形状をできるだけ小さく、平たくすればよいのですが、そうするとバルブ挟み角度が狭くなるので、シリンダーヘッドの背が高くなります。それを回避し、かつバルブのストローク量を確保したのがロッカーアーム方式です。
これはバルブ周りの慣性重量の増加というデメリットを含みますが、バルブストロークを大きく確保できるのと、バルブクリアランス調整(これをタペット調整といいます。)の整備性を上げたのが採用の理由です。
多くのDOHCエンジンはロッカーアームを持たずに直接打式ですが、このロッカーアーム方式は、ホンダが80年代に好んだ手法でした。
また給気効率を上げるために80年代初期にヤマハが一時期採用していたのがYICSです。これは多気筒エンジンで、あるシリンダーが吸い込んだ給気の流れの慣性を、他の、給気待ちのシリンダーの給気に補助的に利用するという画期的な機構でした。高回転ではあまり効果が無かったらしいですが、低速では給気の流れの慣性を利用しての給気効率向上を目指したものでした。
今時はこの機構は無いので、別のテクノロジーで補えているのでしょう。
最終的にはターボ搭載となり、4サイクルエンジンは究極の形となりますが、乗るのもためらうような過給機構付きの高性能2輪車はもう、恐れしくて乗れない年齢になってしまいました。
久しぶりに一筆したためましたが、皆様のお好きな4サイクルエンジンはどの機構であるのか、またコメントをお願いする次第であります。
では、皆様、春先のパーキングエリアで。 ピース。